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2020.10.09

【活動報告】UTokyo-PKU Joint Course第2回講義 2020年10月9日

2020年10月9日(金)、第2回「UTokyo-PKU Joint Course」が開講された。第一回講義の報告にもあるように、東京大学と北京大学が協働して開講するこの授業には、両大学のほか、カリフォルニア大学バークレー校、ケンブリッジ大学ほか11大学が結成する国際研究型大学連合(IARU)、およびソウル大学といった世界各地の大学から参加者が集っている。

この日は、公衆衛生学がご専門の橋本英樹氏(医学系研究科教授)を講師としてお迎えした。具体的な距離に加えて、参加者の間に大きく横たわっているのは時差の問題である。この困難を解消し、毎回異なる講師を迎えてディスカッションを行うための工夫として、本講義では、動画教材共有プラットフォームPANOPTOを活用している。この日も、PANOPTOを通じて配信されたオンデマンド教材を視聴した学生たちから、バラエティに富んだ質問・コメントが寄せられた。

平均寿命とGDPの関係性を表した”the Preston Curve”

2012年のPreston Curve:GDPと平均寿命の関係性は年々変化している

冒頭で橋本氏は、公衆衛生(Public Health)を考える上で重要な観点として、“Social Determinant of Health”——わたしたちの「健康」が、社会的要素によっていかに決定され得るか——に言及した。ここで社会的要素とは、政治・経済・文化といった多岐にわたる領域から構成されるものである。この観点は、COVID-19をめぐる昨今の状況を考える上でも不可欠である。

講義で紹介された、「Institute of Health Metrics and Evaluation(ワシントン大学の保険指数評価研究所)」のウェブサイト:http://www.healthdata.org

参加者からは、経済格差と平均寿命の関係性、あるいは、国家の政治体制やそれを支えるイデオロギーが公衆衛生をめぐる政策に与える影響、といったことに関する質問等が寄せられた。いずれの質問も、公衆衛生をめぐる普遍的な問いと、参加者各自が持つバックボーンとが交錯することによって生まれたものだったと言えよう。

異なる文脈の中で構築された知的体系の出会いが、化学反応をもたらし、相互変容が促されるという、EAA設立に込められた期待が、橋本氏と学生諸氏との交流によって実現された、貴重なひとときであった。

 

報告者:崎濱紗奈(EAA特任研究員)