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2020.01.31

Winter Institute 2020 at NYU-Report 5

最終日である10日は、Lee-Anne Sim(ANU)、Wu Shuang(PKU)、Kathrin Witter (Princeton) 、Haziran Zeller (Technische Universität Berlin)、Tan Zijian(ANU)たち五名の大学院生の発表であった。Sim氏は新たな金融システムの可能性を模索している。その際一つの巨大なシステムを志向するのではなく、identityが多種多様であるように、様々な連帯を基礎においたシステムを考えることの必要性を述べた。Wu氏は孫文がアメリカの政治思想を吸収しながら打ち出した主張を分析対象として「訓政」の問題について論じた。 Witter氏とZeller氏は合同で発表し、テオドール・アドルノを参照しながらパーソナリティと社会の関係について、昨今のidentity politics の状況を踏まえながら論じた。最後のTan氏は魯迅の『野草』をニーチェの思想などを参考にしながら分析した。その過程の中でモーリス・ブランショのニーチェ読解にも言及し、魯迅のテクストを様々な視点から読解しようという試みが展開された。


合計11名の大学院生の発表は、専門分野も幅広く刺激の多いものであった。また、初日のレセプションや会議の合間に互いの研究や大学の状況などについて話すことができ、極めて有益な機会となった。大学院生の発表後、そのまま全体の総括に入った。5日間の濃密なプログラムを経て参加者にはやや疲労の影も見られたが、この期間で得られた課題や問題について意見交換がなされた。大学院生からシニアの学者まで、幅広い年代で構成された本Instituteは、参加者全員にとって普段の研究生活の中では得難い機会である。最後に今回の全体責任者である張旭東氏(PKU・ANU)が改めて参加者に対して謝意を述べ、盛会のうちに閉会した。

報告者:建部良平(EAA RA)