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2022.04.20

【報告】2022 Sセメスター 第1回学術フロンティア講義

2022年48日(金)、学術フロンティア講義「30年後の世界へ――「共生」を問う」第1回がZoomにて行われた。今回はガイダンスとして、コーディネーターの石井剛氏(EAA副院長)が開講趣旨の説明と各回の授業を担当する講師陣の紹介をした。

石井氏は冒頭で、学問をする意味とは、自由になるための言葉を獲得するプロセスにおいて、自分の力で自由を開いていくことだと述べた。そして、学術フロンティア講義の主な目的は、30年後の世界をどのような社会として構築していきたいのかということに想像を巡らせながら、ヒントとなる言語を教員と学生がともに探していくことである、と説明した。それは可能性の問題ではなく、むしろ希望の問題なのだと強調した。

その後、石井氏は黒川紀章の「共生の思想」、宮木久雄の「相生」、中島隆博の「共死」、田辺明生の「共生成」などを例に取り上げ、従来の生活のあり方を見直す機会を与えてくれる「共生」概念について説明した。

2020年初頭からの僅か2年間で、新型コロナウイルスの感染拡大によって社会のあり方は大きく変容させられた。私たちは「不要不急」を避け、ステイホームを要請され、「外出」や「対面交流」を前提とする文化活動も一時遮断されてしまった。しかし、私たちのステイホームを可能にしたのは、ステイホームできない人たちの存在だということも忘れてはならないと、石井氏は述べた。また、コロナ禍で不要と思われるものは本当に不要なのか、私たちがいままでの文化活動をなくして基本的な生命維持の生活だけを送ることを望んでいるのか、という問題も考えるべきである。

一方、コロナ禍で多くの企業活動が止まり、人々の自粛生活が続いた結果、環境汚染は確実に改善されたという。コロナ禍が明けた後も、私たちは自然環境との「共生」を維持しつつ、人間として営み続けるために必要なものや自粛すべきものを改めて問う必要がある。そこで石井氏はイヴァン・イリイチの提唱した「節度ある楽しみ(エウトラペリア)」という考え方を紹介した。

今後、受講者は学術フロンティア講義という場で、「節度ある楽しみ」をはじめとする既存の「共生」概念と対話しながら、人間全体がよりよく生きるための「共生」概念を自分の力で見つけ、新しい未来への希望を開いてほしいという石井氏の激励の言葉とともに、初回講義は締め括られた。

 

報告:陳希(東京大学大学院元博士課程)