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2023.04.19

【報告】EAA/東文研共催セミナー“Tōshōgū as a Source of Sacred Legitimacy: Festivals of the Gosanke in Tokugawa Japan”

202339日、EAA/東洋文化研究所共催セミナーがハイブリッド形式で開催された。訪問研究者として東文研に滞在中のイアン・シパリー氏(シカゴ大学)が、 “Tōshōgū as a Source of Sacred Legitimacy: Festivals of the Gosanke in Tokugawa Japan”(「神聖なる正統性の源泉としての東照宮:徳川期日本における御三家の祭事」)と題し発表を行い、中島隆博氏(EAA院長)が司会を務めた。

東照宮と言えば、我々はただちに日光東照宮を連想しがちであるが、実は各地に存在している。発表では例として上野東照宮や久能山東照宮などが言及されたが、シパリー氏はこれらの地に赴いてフィールドワークを行なってきた。シパリー氏は、自身が収集した絵巻物や屏風といった図像資料の読解に基づき、東照宮が権威・権力の創出・維持装置としてどのように機能したのかについて、分析を行なった。また、東照宮という宗教=権力装置の創設の経緯についても焦点が当てられた。シパリー氏によれば、家康を「大神宮」として祀るべきであると主張する吉田神道と、薬師如来を本地とする「大権現」として祀るべきであるとする山王一実神道との対立や、比叡山という巨大宗教権力に対抗するための機構として東照宮を機能させようとする山王一実神道の目論みが背景にあった。大胆にも東国に設置された幕府が、長きにわたり京都というトポスを中心に発展してきた政治・宗教権力を抑えこみ、自身の正統性と権力を安定させるためには、東照宮という装置が必要とされたのだ。

発表を受けて、対面・オンライン参加者の双方から多くの質問とコメントが寄せられた。コロナ禍において東京に滞在していたシパリー氏は「久しぶりに行った対面での研究発表は楽しく貴重なものでした」とおっしゃってくださったが、そうした喜びは私たちにとっても全く同じであった。

 

報告者:崎濱紗奈(EAA特任助教)