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2023.03.15

【報告】張燦輝氏講演会 “General Education and College Education”

2023年3月10日(金)15:00より、101号館11号室にて、張燦輝氏(国立清華大学客員教授)をお迎えしてのワークショップ“General Education and College Education”が開かれた。司会は、張政遠氏(東京大学)がつとめた。張燦輝氏は、ハイデガーを中心とする現象学が専門の哲学研究者であり、もともとは香港中文大学の教員であった。そしてイギリスからの香港返還直後の1998年から2012年までの14年間、香港中文大学に新しく設置されたGeneral Educationのセンター長を務めた経験について、今回、“From Distribution to Dialogues: The General Education Program at the Chinese University of Hong Kong and its Relevance to University Education in the 21st Century”と題して英語でお話くださった。

張燦輝氏(左)と張政遠氏(右)

ジェネラル・エデュケーション・プログラム(総合教育と便宜的に訳せるだろうか、GE Programと略称されていた)は、張氏によれば、教員と学生が共に学び、大学のイデアを実体化=受肉化するものであり、具体的には、文系学部にかぎらず医学部を含めた文理双方の学生にたいして人文学と自然科学の古典購読、講義、発表・議論、課題提出をサイクルとする、対話重視の教育課程である。東アジア藝文書院(EAA)は、中国に代表される書院というかたちでの少人数教育の実現をめざしているが、張氏の場合は、12世紀の中世ボローニャに遡り、都市と大学とが結ばれるなかでの全人的教育のシステムに依拠しており、立脚点がいささか異なるように思われたが、上限を25人とする規模感をはじめ共通点も多いように思われた。

コメンテイターをつとめたわたしからは、具体的にどのように「書く」ことがGEプログラムでは希求されているのかを質問した。ほかにも、地域の各種コミュニティと大学がどのような協働関係を結び、どのような役割を果たすことが求められているだろうか、といった質問があがった。ディスカッションからは、終わることなく、批判的かつ自由に思考しつづけるための切っ先、衝撃をいかにして与えられるかが大切にされていたことがうかがわれた。また大学と居住先が離れているからこそ、フィールド・トリップのような研修が有効になってくる現状も対比的に浮かびあがった。じっさいに新しいリベラル・アーツプログラムを科目履修の形式で体系化した経験から聴衆が受け取ったものは大きかったように思う。継続して対話の機会を持ちたい。

報告・写真:髙山花子(EAA特任助教)