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2023.06.16

【報告】第2回『美しいアナベル・リイ』勉強会

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2023年6月15日(木)夕方、工藤庸子氏(東京大学名誉教授)、岩川ありさ氏(早稲田大学)、菊間晴子氏(東京大学)とわたしの4人で、第2回アナベル・リイ勉強会を行った(第1回報告はこちら)。大江健三郎の『美しいアナベル・リイ』は、もともと作家生活50周年記念小説として、雑誌『新潮』2007年6〜 10月号に「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」というタイトルで短期集中連載された作品である。

今回の発表担当は菊間氏で、『美しいアナベル・リイ』序章の第2節・第3節の雑誌初出、単行本、文庫本の異同について、細やかな報告がなされた。たとえば連載開始当初は、サクラの夫、デイヴィッドがまだ生きていると思われる記述になっている点から、ディヴィッドの死後に遺品「アナベル・リイ」映画無修正版がみつかった事件を軸とする筋書きはどの時点で生まれたのだろうかという問いが投げかけられた。ほかにも、単行本化にあたって、微妙な書き換えが行われた「私の目の周りは、熱をおびてきていただろう」(単行本19頁、文庫26頁)という一文の解釈をめぐって、議論がなされた。また、菊間氏からは、サイードの『晩年のスタイル』に引用されるトーマス・ハーディ『日陰者ジュード』の訳が大江自身によってどのように訳されているのか、そして物語の鍵のひとつであるエリオット「リトル・ギディング」が中略して引用されていることについて指摘があり、木守というキャラクターが周到に造形されていることが確認された。

関連して、工藤氏からは、『万延元年のフットボール』の目次の構造とサルトルのエピグラフの出典について報告があり、大江の引用に張り巡らされている仕掛けを読み解くためには、当時の知的風景に近づいてゆく必要性が確かめられた。次回の勉強会は8月を予定している。

報告・写真:髙山花子(EAA特任助教)