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2022.02.09

【報告】中島隆博先生御著書『危機の時代の哲学―想像力のディスクール』書評会

20211113日土曜日の昼下がり、東文研にて東京大学東アジア藝文書院院長、中島隆博先生が20218月に東京大学出版会から出版された『危機の時代の哲学―想像力のディスクール』につき、書評会を開催した。当日は登壇者による対面とオンライン視聴の開催となった。

 

中島先生が「はじめに」に書かれた「小さな一点での批判的関与」を、私たち一人一人が、展開していくに当たり、中島先生との対話を通して、「危機という構造」にどのような風穴を開けることができるのか、書評会という「場」を設け、共に探求する機会となった。可能な限り、若い人たちからの意見を伺いたい、また若い人たちと是非、意見交換したいという中島先生の強い御意向と御要望を受け、当日は実に幅広い年齢層の学徒たちが集い、意見交換を行った。登壇者はEAAユースの学部学生である大石直樹さん、Xu Minghaoさん、円光門さんをはじめ、京都大学大学院のナヌアシュヴィリ・テクラさん、EAA特任研究員の崎濱紗奈さん、田村正資さん、EAA特任助教の具ユジンさんに加え、総合文化研究科の張政遠准教授、王欽准教授、東洋文化研究所の田中有紀准教授をお招きし、EAA特任准教授の佐藤麻貴が司会を務めた。

 

 

今回、新たな試みとして、中島先生の前では皆が一様に学生ということで、あいうえお順で批評を行った。それぞれの参加者からの指摘について次にまとめる。大石さんは歴史教育について指摘され、竹内好の体験の重ね合わせに触れながら、歴史を取り戻すことについて。具さん、崎濱さんはそれぞれ国際政治、国内政治の観点から主権のパルタージュに参加というプラクシスを付加することにより、どのような参加が可能かについて。Xuさんは正史の歴史叙述の在り方について触れながら、時間的空間的連続性だけでは回収できない歴史の新たな可能性について。田村さんは原子力の合意形成と主権について。張先生からは分権、分割、分有の概念から三木清に触れつつ分裂という危機をどう直視すれば良いのかという問いが出された。テクラさんからは東洋という西洋で作られたイマジネーションの所在の今後の扱いについて。円光さんからは、矛盾を内包している主権の諸問題について。王先生からは『危機の時代の哲学』と哲学の危機について、受動的な想像力ではなく、他者よりも自分の不穏なポジション、自分の主体性を想像できる力について。佐藤からは普遍と統の対峙の仕方における排他的、抑圧的な隠れた欲望について指摘した。

 

小休憩後、中島先生からそれぞれの批評に対して返答を頂戴した。その後も、フロアから活発な質問や意見が出て、書評会は盛会の内に終えることができた。企画するに当たり、中島先生から、「私の書評会は成功しないから」と散々に警告されていたのだが、今回の書評会は大変な盛会であったため、主催した不肖弟子としては安堵致した。ヒューマニティーズという学問に携わる私たちに問われていることは、危機を煽るのでもなく、悲観するのでもなく、はたまた危機から目を反らしたり、逆に危機を利用したりするのでもなく、「危機をどう語り、どう捉えるか」という、危機に対する私たち一人ひとりの、ある種の関与の在り方であることを脳裏に刻みつつ。

 

報告者:佐藤麻貴(総合文化研究科)