ブログ
2025.10.23

【報告】RA協議会 第11回年次大会

2025102122日に、一般社団法人リサーチ・アドミニストレーション協議会(RA協議会)主催で第11回年次大会が熊本城ホールにて開催された。本大会は、全国の大学・研究機関、行政機関、企業などでリサーチ・アドミニストレーションに携わる関係者が一堂に会し、政策から実践まで、研究マネジメントの最前線を共有する場である。今回は全国から832名が参加し、38のセッションと142件のポスター発表が行われた。「グローバル連携とローカル貢献:URAの戦略的アプローチ」をテーマとした今回は、国際的な研究協働の推進と地域社会に根ざした知の創出という二つの方向性を、いかに両立させつつ、戦略的に発展させていくかという課題が提示された。

 

 

全体を通じて浮かび上がったのは、URAが「支援者」から「共創者」へと変容している現状である。科学技術・イノベーション政策や大学の研究力強化の枠組みの中で、URAは大学内外の多層的なネットワークを編み直し、知を結び直す存在として位置づけられつつある。産学連携、地域連携、国際政策参画といった外部との関係性を再構築する一方で、内部では事務職・研究者・URA間の協働を通じて組織文化の変革を促す試みも広がり、その重要性が大会を通じて共有された。また、URA自身の能力開発に焦点を当てたコーチングや制度設計の実践を扱うセッションには多くの参加者が集まり、「支援を支える支援」としての意義が再認識された。さらに、事務職URAをテーマとしたセッションもあり、自身の働き方や今後のキャリア形成の道筋を考える良い契機となった。参加者同士でディスカッションの時間を設けたプログラムも多く、多様な立場からの学びが得られた。私自身の知識や経験に関心を寄せてくださる方もおり、それらが他の組織の実践にも役立つ可能性を感じることができた。

私はこの大会で、東京大学URA推進室が実施したOn the Job DevelopmentOJD)制度に関する成果をポスター発表として報告した。OJDは、部局URAが兼務で本部業務に参画し、全学的課題に取り組む実践を通じて、本部と部局が相互に学び合う仕組みであり、20249月に導入された制度である。私はその第1期メンバーとして若手研究者支援・学際研究促進の業務を担当し、異分野の研究者が対話を通じて研究の可能性を広げる場づくりに取り組んだ。URA同士が専門や立場を越えて協働し、業務を通じて関わった若手研究者も含め、互いに学び合う「共育」の実践ができたことは、若手研究者の支援に新たな視点をもたらすとともに、組織の知を循環させる契機となった。

発表当日のコアタイムでは、全国的には少ない部局分散型の東大URAの現状と課題、兼務の取り組みに対する工夫に高い関心が寄せられ、立場や組織を超えて発表を見に来てくださった参加者の方々と活発な意見交換ができた。本部URAを中核としつつ、部局URAが分散的に活動する「ネットワーク型」から、本部業務を経験する部局URAを増やしていく「ハイブリッド型」へと進化する東大URA体制の構想には、組織改編を進めている他大学の方々からも多くの共感が寄せられた。部局と本部の協働によって「弱い紐帯」だけでなく「強い紐帯の強み」を実感できたという実践報告は、URAという職能全体のキャリア形成に新たな視点を与えるものである。また、こうした議論を通じ、OJDが単なる人材育成制度ではなく、大学組織における知の循環装置として機能できることを再確認できた。

OJDへの参加を通じて他大学のURAとの繋がりも広がり、今回の大会では既に面識のあるURAと再会する場面も多く、今秋に東北大学URAとなられた野澤俊太郎先生とも再会を果たした。人脈の広がりと、出会った方々から得た多くの学びによる自身の成長を強く実感した二日間となった。

年次大会を通じ、URAが「地域から世界へ」と連なる知のエコシステムのハブとして、政策・研究・社会の三層をつなぐ役割を担いつつあることが明確に示された。OJDの実践は、その理念を東京大学という大規模組織の中で具現化する試みであり、今後のリサーチ・アドミニストレーションの在り方を考える上でも貴重な知見を提供している。OJDへの参加は私にとって大きなチャレンジだったが、若手研究支援・学際研究促進の業務を通じて得た出会いや学びは、自身のキャリア形成にとっても大きな糧となった。業務を通じて知識や情報を共有し、互いに高め合う経験を重ねたことは、今後の研究者や研究を支える人材の育成にも活かしていけると感じている。このような制度を整え、機会を与えてくださった東京大学URA推進室の方々と、共にOJDに取り組み、ポスター発表を行った東大URAのメンバーに深く感謝申し上げたい。

次回の年次大会は20269月下旬に開催予定であり、一般社団法人大学技術移転協議会(UNITT)のアニュアルカンファレンスと連続開催される見込みである。文部科学省が本年6月に策定した「研究開発マネジメント人材の人事制度等に関するガイドライン」を踏まえ、URAの制度的位置づけやキャリアパスの整備をめぐる議論が一層深まることが期待される。東京大学URAとして最大限に貢献できるよう、今後も精進していきたい。

最後に、研究マネジメントのための学びに日頃より理解を示し、今回の年次大会への参加を快く支援してくださった東洋文化研究所EAA本郷オフィスの先生方、そして、そのようなオフィス運営に多大なるご支援をくださっている潮田洋一郎氏に、心より感謝申し上げたい。ありがとうございました。

 

報告者:伊野恭子(EAA本郷オフィス学術専門職員/東洋文化研究所URA)