ブログ
2024.03.18

【報告】EAAワークショップ「北宋易学と近代科学」

People

2024年310日(日)14時〜16時、東洋文化研究所およびオンライン(Zoom)にて、EAAワークショップ「北宋易学と近代科学」が開催された。陳叡超氏(首都師範大学政法学院)が報告を行い、田中有紀氏(EAA)が司会を務めた。本ワークショップはEAAと科研費挑戦的研究(開拓)「機械学習を用いた東アジア数理調和思想の実証的研究と共生倫理の検討」の共催であり、科研費代表の伊東乾氏(情報学環)のほか、平澤歩氏、新本果氏、余静嘉氏(以上、人文社会系研究科)が対面で参加した。

本ワークショップは、西欧近代科学とは独立に歴史と方法を展開してきた東アジアの術数学的な思考について理解を深め、近代科学がもたらした様々な問題に対して、これらの思想がどのように応答できるのかを考察するものである。

陳叡超氏は、「从北宋道学易学看古代易学世界观与现代科学世界观的差异比较(北宋道学の易学に見える伝統易学の世界観と近代科学的世界観の差異)」と題して行った報告の冒頭で、以下のように指摘した。近代以前の思想は、ある種の伝統的世界観全体の中で生み出されたものであり、現在の我々が熟知している近代科学技術によって構築された世界観とは、様々な方面において大きな差異が存在している。近代以前の哲学思想を復元するためには、古人の思想世界に入り、伝統的世界観と近代的世界観とを精細に比較・分析する理論的視野を打ち建てることが不可欠である。続けて陳氏は、「関連的思考」という視点から、北宋道学の易学に代表される中国の伝統的世界観の特徴について検討し、近代科学的世界観との比較を行った。さらに、このような世界観の違いにともなって、伝統的世界と近代的世界では人間の主体性に対する認識も異なっていることを論じた。最後に、古今の世界観の比較を簡単に総括し、中国の伝統的な世界観を考察することによって明らかになる、今日の科学的世界観が抱える問題と限界、および古今の思想を融合した未来の世界観の可能性について考察した。

報告の後には質疑応答が行われた。はじめに田中有紀氏が、易学の思想は単なる数理的な思想ではなく、聖人を目指す修養などの道徳的な問題とも関わっていたが、そもそも聖人を目指そうとするような思考がない現在の我々は、この中国の思想をどのように生かすことができるのかという質問をした。この他にも、漢唐の易学と北宋易学の間にはどの程度の継承や発展関係があるのか、また、北宋における科学技術の発展と北宋の易学思想の関係についてなど、参加者より様々な視点からの質問が出され、議論が交わされた。

 

 

報告:新本果(人文社会系研究科)