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2025.09.25

【報告】Summer Institute 2025: Day 3, 鈴木教授レクチャー

鈴木教授の講演「『孔乙己』から見る魯迅」は、魯迅の代表的名篇『孔乙己』を切り口として、学生たちに魯迅思想の全体像を概観的に紹介するものであった。教授はまず魯迅を新文化運動期の「国民性批判」という文脈に位置づけ、中国伝統社会における「非人道性」への鋭い批判を強調した。しかし一方で、人と鬼との葛藤からにじみ出る中国伝統の「民間社会」や、そこに生きる人々への共感もまた、魯迅作品に不可欠な要素であることを指摘した。さらに教授は、魯迅作品における「希望」の逆説的な三重の相を分析した。すなわち、『「吶喊」自序』に示された「否定できないこと」、 『故郷』に表れた「肯定できないこと」、そして『野草』に描かれた「絶望と希望はいずれも虚妄であること」である。講演後の質疑応答では、学生や教員から「ニーチェが魯迅に与えた影響」および「『孔乙己』の結末と希望との関係」という二つの質問が寄せられ、鈴木教授が丁寧に応答した。

報告 罗伯庸 (北京大学)