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2025.07.17

【報告】第30回 藝文学研究会

2025710日、EAA本郷オフィスにて第30回藝文学研究会を開催した。過去二回に亘って「情動」概念の理解を深めるため、読書会を行なってきた。今回はそこで得られた知見をもとに、今年度開催する予定の「情動」をテーマに据えたシンポジウムの方向性について検討を行った。

このシンポジウムの目的は、「情動」という概念を軸に据えることによって、異なる分野・領域の研究者の議論を通わせる場を創出することである。シンポジウムの企画者となるEAA本郷のメンバーも、それぞれ全く専門が異なる中(田中氏は朱子学、柳氏は仏教学、崎濱は沖縄学)、そもそも三人の共通地平を築くことが最初の難関である。しかし、今回の研究会を通して、「情動」という概念を手がかりに、存在と存在の間に生じる相互の働きかけとでも言うような動態を、それぞれの見地から探究することができそうだ、という予感を得ることができた。

例えば田中氏は朱子学における「リズム」という主題について論じる可能性を示した。柳氏は、大乗仏教の根幹を成しながら、実は仏教学内部の原理では説明が困難な「利他」の根源的動機というトピックを、「情動」概念を補助線としながら論じることを示唆した。崎濱は、昨今広がりを見せる「ネット右翼」と呼ばれる言説及びその流布という現象を、沖縄という場に即して分析する方向性を考えている。

また、シンポジウムの登壇候補者についても話し合いを進めた。「情動」論は、哲学やメディア研究のみならず、文化人類学においても盛んに論じられているテーマである。日本語文献では、例えば西井凉子・箭内匡編『アフェクトゥス——生の外側に触れる』(京都大学出版会、2020年)がある。哲学、メディア研究、人類学、社会学、朱子学、仏教学と、普段一堂に会することはまずあり得ない分野の研究者が集まって、「情動」という概念を軸に据えて議論した時、どのような化学反応が起こるだろうか。秋〜冬ごろの開催を見据え、シンポジウムの内容を丁寧に練り上げていきたい。

 

報告者:崎濱紗奈(EAA特任助教)