ブログ
2024.01.31

【報告】アレックス・イ・テックァン氏講演会「リヴァイアサンと惑星的サイバネティクス:新たな政治哲学に向けて」

2024年1月26日(金)17時より、東京大学駒場キャンパスKOMCEE Westレクチャーホールにて、アレックス・イ・テックァン氏(慶熙大学校)による講演会「リヴァイアサンと惑星的サイバネティクス:新たな政治哲学に向けて(Leviathan and Planetary Cybernetics: Towards a New Political Philosophy)」が開催された。

フランスのジョゼフ・フーリエが19世紀初頭にすでに気候変動を資本主義の限界と結んでいた前史を起点とし、ベンヤミンのフーリエ読解、ラトゥールの共通世界、ノーバート・ウィーナーのサイバネティクス理論、ギュンター・アンダースによる原子力論、ドゥルーズの管理社会論、スティグレールとシモンドンによるドゥルーズ読解といった様々な議論を紹介したうえで、イ・テックァン氏が提起したのは、たとえばつぎのようなことを含む、多岐にわたる論点だった。気候変動によるアポカリプスが叫ばれているが、人間は絶滅しても地球は残る現実がある。前近代に戻りたくないという意思もまたある。コミュニズムはあくまでも選択である。世界の終わりは想像できるのに、なぜ資本主義の終わりを想像できないのか。どのようにただひとつしかないこの世界というコモンを保存するかを考えるにあたって、すでに数えきれないほど世界は終わり、人びとが虐殺されてきた事実を振り返る必要がある。そうしたなか、AIもまた、一つではなく、たくさんの使用目的が開かれてゆく(open)ことから、自分自身のテクノロジーを作ることじたいが生き方の創造となり、ポリティクスとなるのではないか……。

金杭氏(延世大学)の司会のもと、コメンテイターの國分功一郎氏(東京大学)からは、なぜ今日あらためて主体化が問題となっているのかという大きな問いが出され、いわゆるフランス現代思想を再読するかたちで、技術と人間をめぐって、議論が尽きなかった。

報告・撮影:髙山花子(EAA特任助教)