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2022.07.15

北京大学「東アジア研究ジョイントプログラム」の紹介

「東アジア研究ジョイントプログラム」
トップレベルの国際的人材システムを構築し、学問を志す研究型人材を育成する

「東アジア研究ジョイントプログラム」の紹介
  プログラム紹介 


  「東アジア研究」ジョイント・プログラムは、北京大学国際批評理論センターと東京大学東洋文化研究所、総合文化研究科との12年にもわたる連携(大学院生の合同指導、国際連携型学術研究、教員の相互訪問、夏・冬のワークショップを含む)をベースにして、北京大学党委書記(当時)邱水平氏と東京大学総長五神真氏が立ち上げ、東京大学副学長羽田正氏と北京大学副学長王博氏が2019年に共同で締結した両大学「戦略的パートナー重点プログラム」である。
   本プログラムは元培学院が運営している。元培学院の特徴を生かし、北京大学における「双一流」と「新文科」の取り組みと密接に連動し、この地域におけるトップクラスの大学学部生の交流と合同育成、および人文社会科学分野における両大学の優秀な学者の学術交流と連携を通して、世界トップレベルの国際的合同育成システムを構築し、北京大学、東アジアないし全世界の学界のために基礎研究を志す優れた人材を育成する。

            北京大学2022年「東アジア研究ジョイントプログラム」修了式での集合写真

  育成方針 

   強みの相互補完、リソースの共有、誠意のある協力、細心な指導、慎重な管理という基本発想に基づき、北京大学と東京大学の人文社会科学のリソース、および両大学のカリキュラムと教育の特徴の相互補完的な性格を十分に生かし、北京大学の学部生で英語と日本語の能力が高く学業・人物ともに優れた者を東京大学に派遣し、東京大学の学部生で中国語と英語の能力の高い者を受け入れる。以下のような育成方法で高いレベルの合同育成を保証する。
    1.言語能力についての要求:学生が本プログラムに採用されるには、高い英語能力と一定程度の基礎的な日本語力をもっている必要がある。募集要項では、TOFEL100点あるいはIELTS6.5点以上の英語力が求められている。本プログラムに採用された後も、北京大学の学生に外国語能力の向上を推奨し、日本語と英語がともに上級レベルに到達することを要求する。
    2.メンター制度:本プログラムは「東アジア研究」学術委員会と教育指導ユニットを設置し、メンター制度を導入している。現在、北京大学の人文・社会科学系の学部から15名の専任教員をメンターとして招聘している。学生がプログラムに参加すると、学術委員会が学生の意向を考慮し、学生ごとにメンターを配置する。メンターは学生の履修科目、学術交流、実践的な調査について指導を行い、大学生活への適応を支援する。

        
                  「東アジア研究ジョイントプログラム」メンター交流会での記念撮影

    3.カスタマイズ型選択履修提案:深読みするテーマを決めた後、2年目以降は、学生はメンターの指導の下で、学術委員会にカスタマイズ型選択履修提案を申請し、より具体的なテーマを確定し、教育改革による科目選択機能を活用し、大学全体で受講できる科目(学部生の科研プロジェクトおよび本プロジェクトに関する学際セミナーなどを含む)を履修する同時に、自らのテーマにかかわる学部生向けの科研プロジェクトに従事し、今後の学習・研究の方向性を定め、適合性のある学術的なトレーニングを受けたうえで、卒業論文を完成させることを目標とする。  
   4.コアティーチングプラン:学術委員会と教育指導ユニットは、共同で本プログラムのコアティーチングプランを制定し、北京大学と東京大学という二つのコースを設置する。本プログラムに参加する学生は教学プランの要件に従って18単位を取得し、メンターの指導の下で、コア科目6単位と選択科目12単位を履修しなければならない。 
   5.セメスター交換:選抜された学生は、東京大学/北京大学で1〜2セメスターを過ごし、交換期間中、両側の学術委員会の指導の下で科目を選択し、東京大学がもうけた本プログラムの共通基礎科目を優先的に履修し、各学期4単位以上の選択科目(語学科目を除く)を履修する。セメスター交換期間中、北京大学と東京大学の学生は、言語環境を十分に活用しながら外国語を学び、深く東アジアの文化を理解し、必要に応じてフィールドワークなどを行ったりして、帰国後の論文執筆に向けての準備をしておく。

        
               東京大学に交換留学中の元培学院2019年度中国語専攻の学部生、趙沢民さん

   6.社会実践と学術活動:本プログラムに参加する学生は、元培学院教学委員会が主催する様々な学術交流活動(メンター交流会、学術フロンティア講義、実践的調査・訪問など)に参加する機会がある。本プロジェクトの社会的実践活動と学術的活動に参加することにより、学生は実践的経験を増やし、学術的視野を広げることができると同時に、自らの学術的見解や文化的理解をメンターと仲間と共有することもできる。 
    7.研究者の交流と訪問:本プロジェクトは成熟した研究者同士の訪問と交流の仕組みを持っている。例えば、定期的なワークショップや学術会議を主催し、日本と中国の学術交流を促進し、最終的には東アジアに拠点を置き、世界に影響を与える「東アジア文明学術共同体」を確立し、研究を通じた教育を普及するという目標達成を目指す。

      
            「東アジア研究ジョイントプログラム」の学生が浮世絵展を見学した時の記念撮影

   
        「東アジア研究ジョイントプログラム」学生交流セミナー

        
       「東アジア研究ジョイントプログラム」シリーズ講座のポスター

  学生発展  –

    2022年現在、「東アジア研究ジョイントプログラム」は、合計4回の学生募集を行ってきた。募集の対象は、元培学院、中国言語文学学科、社会学学科、歴史学学科、外国語学科などといった人文社会科学系分野の学生である。そのうち50%以上の学生が東京大学へのセメスター交換を終了した。また、本プログラムの修了条件を満たした8名の学生が名誉証明書を授与され、そのうちの9割が中国の一流大学で勉強を続けている。

 

本プログラムのメンターからのメッセージ

 東アジアは、歴史的伝統と現代世界の交差点として、今日、世界で最もダイナミックな地域だと言える。「東アジア研究ジョイントプログラム」が、東アジアが自らの経験に立脚しながら世界を理解し、さらに思想や文化の領域において旺盛な生命力を持つ研究の伝統と教育形態を発展させることを、私は期待しています。 

   ———北京大学元培学院院長・哲学学科教授 李猛

 

北京大学・東京大学の「東アジア研究ジョイントプログラム」は、文明の高地から他者と自己を省察するものである。中華文明の偉大な復興は、これからの世代の視野と気概にかかっています。道を究めようと志す者は、偉大な知によって導かれる必要があるのです。本プログラムは、学生にこうした偉大な知に導く架け橋の一つだと信じています。                       

 ———北京大学大学院副院長 哲学学科教授 楊立華

 

「東アジア研究ジョイントプログラム」は、東アジアを拠点としながら世界に目を向け、文明にまつわる基礎的な研究と教育を探求しています。学生の諸君が私たちと共にこの平凡ならざる探究、そして自己理解を深めるための旅に参加することを、心より歓迎します。

———北京大学元培学院副院長・社会学学科准教授 孫飛宇

 

(本記事は北京大学元培学院によるプログラム紹介文の一部を日本語に翻訳したものです)

翻訳:陳希(EAA特任研究員)、郭馳洋(EAA特任研究員)、汪牧耘(EAA特任研究員)