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2021.01.15

第4回 101号館映像制作ワークショップ

101号館映像制作WSの第4回にして新年初回が、2021113日(水)に開催された。石井剛氏(EAA副院長)、WSのコーディネーター・髙山花子氏(EAA特任助教)をはじめ担当RAの小手川将氏(総合文化研究科博士課程)、高原智史氏(総合文化研究科博士課程)、そして報告者の日隈脩一郎(教育学研究科博士課程)が出席したのにくわえ、今回は近代日本思想史の枠組みの下、沖縄の主体化の問題に取り組んでいる崎濱紗奈氏(EAA特任研究員)を新たな参加者として迎えた。

 前回の駒場キャンパスツアーを受けて、本映像作品のモチーフとしてどのようなことを描けるかが、RAよりコンセプトベースで提示された。旧制一高生が抱いていたナショナリスティックなエリート主義的気質およびそれと裏返しの排外性、寮を抱えるキャンパスの共同体的性格は、どれも101号館を擁する空間を特徴付けるものだろう。

 また、RAによる駒場博物館での史料調査から、具体的に映像作品にいかなる素材が盛り込めそうかということについても検討がなされた。当時の一高寄宿寮委員記録(寮日誌)には、一高生を戯画的に描いた映画『乾杯!学生諸君』(重宗務監督、1935年)が当事者である一高生の顰蹙を買っていたこと、1935年開催の夏の恒例行事・対(旧制)三高戦における流血事件および同戦廃止論争、同年初開催の寮歌祭の盛況ぶりなど、学生の生活や関心をうかがえる事例が仔細に記述されている。

 くわえて、第2WSで浮かび上がった駒場キャンパスの時代的多層性をいかに表現するかという観点から、駒場における60年代の学生運動を収めた映像や90年代のいわゆる駒場寮廃寮問題にまつわる映像の調査の必要性が認識された。引き続き史料調査が進められる中で新たに発見されるであろう事実を含め、素材の取捨選択や有機的連関実現の方途については今後も検討が重ねられるだろう。

 以上の情報共有に対して、石井氏からは一高出身の医学者・作家の加藤周一による往時の回想録『羊の歌』(岩波書店、1968年)の記述が紹介され、映像や史料のみならず、文学作品等も参照しながら視界を拡げる必要性が示されたように思われる。崎濱氏からは、映像作家・高嶺剛氏の沖縄をテーマとした作品群が、本プロジェクトで目指されている作品のイメージとして近いのではないかという意見が寄せられた。とりわけ氏の『ウンタマギルー』(1989年)は、ドキュメンタリー的な性格と幻想性とを併せもつ作品であるとのことで、単なる資料にとどまらない映像としての強度をもった作品づくりに際して大いに参照できそうである。また、小手川氏がかねてより、アメリカの映像作家ジョナス・メカスを本プロジェクトにとってのひとつの参照軸として示していたが、メカスの影響下にドキュメンタリストとして出発したという高嶺氏の経歴は、思わぬ符合でもあった。

 最後に、カメラマンの委嘱や機材の確保など、役割分担や暫定的なスケジュールの確保などプロジェクトを具体化させつつ、諸種の資料を通じてお互いのイメージの語彙をすり合わせていく必要性があるとの認識で、改めて一致した。

報告:日隈脩一郎(EAAリサーチ・アシスタント)
写真撮影:崎濱紗奈(EAA特任研究員)