ブログ
2022.07.01

【報告】EAA「戦間期思想史を語る会」準備会(2)

   2022年621日(火)14時、前回に引き続き、EAA「戦間期思想史を語る会」の第2回準備会はZOOMで行われた。近代日本思想史の見地から第一高等学校の歴史について研究している高原智史氏(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)、郭馳洋氏(EAA特任研究員)、そして私が参加した。今回は主に言語の変化という観点から社会の変容を考える可能性および互いの関心事項について語り合った。
   高原氏は自らの研究対象――旧制第一高等学校の校内雑誌『校友会雑誌』の用例に見られる「元気」と「精神」という言葉の違いから、明治期から昭和前期にかけての時代の変容について語った。郭氏は近代日本と中国における生の哲学や生気論、新カント派、プラグマティズムの影響力に言及し、私は近代日本の言文一致運動および近代中国の白話文運動による言語内と言語外の変化について述べた。また、話し合いの途中で、日本における「煩悶青年」の誕生は日露戦争ではなく日清戦争に遡るということも議論された。
   今回の準備会を通して、次のことが確認された。つまり、日中の近代化とは、それ以前の社会構造を土台とし、これを継承しつつ、しかし基本的にはこれを破壊し、再編成する形で行われている。そしてそのプロセスは言語の内部と外部の変化としても表現される。その意味では、言語は共同体の解体と再編のプロセスについて深く考察できる重要なアプローチの一つだと言っても過言ではない。今後は、両者の関係をさらに練り上げて、今日の各国の社会構造を強く規定していた近代化のプロセスについて考えていきたい。このようにして、「戦間期思想史を語る会」の企画は少しずつ前に進んでいる。

報告:陳 希(EAA特任研究員)