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2020.12.15

第10回 石牟礼道子を読む会

2020年12月14日(月)15:00より、第10回石牟礼道子を読む会が開かれた。今回は、『苦海浄土』の第3部に『天の魚』に撮影の経緯が記されている土本典昭監督の記録映画『水俣——患者さんとその世界』(1971年公開)の鑑賞会を101号館11号室で行った。参加者は、鈴木将久氏(人文社会系研究科)、張政遠氏(総合文化研究科)、それから報告者の髙山花子(EAA特任助教)の3名であった。第3部には、第1章「死都の雪」にチッソ東京本社前での座り込みに上野英信や原田奈翁雄も参加していたことが書かれているように、1970年以降の出来事が多く書かれている。そして、映画『水俣』の未編集のフィルムを1970年9月13日に石牟礼たちが観ていたことも書かれている。そこに描かれているのは、細川一博士と石牟礼の話す場面を撮影する案があったものの、石牟礼が拒絶し、また細川博士が亡くなったことでそれが実現しなかった、という経緯であった。そうしたこともあり、実際の映像を見てみたい、というメンバー間の前からの願いがかなって実現した集まりだった。   


 
土本典昭の『水俣』は、患者家庭29世帯へのインタビューを中心に構成されたものである。2時間に編集した短縮版もあるが、今回は2時間45分の完全版を視聴した。熊本大学医学部の残した患者映像、大阪のチッソ株主総会の実際の場面や、石牟礼道子自身が御詠歌「ひとのこの世は永くして」の練習場面に映り込んでいることを確認した。

  長時間に及んだため、議論の時間はもたなかったが、張氏からは、漁師たちの姿が、3.11後の福島県を舞台に撮られた山田徹監督のドキュメンタリー映画『新地町の漁師たち』(2017年公開)と重なるという意見が出た。鈴木氏は、メジロの競鳴に興じる人のような、その地の日常生活の細部が撮られていることにも言及した上で、患者自身が相当クローズアップで撮られていることから、撮影者と被写体といった単純な二分はそこにはなく、両者が接近して作られた映像である点を確認した。株主総会で御詠歌を歌う発案が出た集まりや、当日大阪に向かうまでの新幹線にも撮影班が同行しているように、一緒に映像を作っている様子が伝わってくるものだったということである。また、石牟礼の『苦海浄土』と重なる要素もあると同時に、一株運動をめぐるやりとりをはじめ、『苦海浄土』には書かれていないものも多く見られる時間だった。この作品は、熊本県水俣市ではなく、鹿児島県出水市の海の映像からはじまっており、東京以外の各地に水俣病を告発する会のメンバーがめぐってゆく場面も映っていることが印象に残った。来週に開催される第11回でも別メンバーが同じ映像を見る予定であるため、来年の集まりで、このドキュメンタリーをめぐって議論することが楽しみである。

報告:髙山花子(EAA特任助教)
写真撮影:立石はな(EAA特任研究員)