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2020.12.14

【活動報告】UTokyo-PKU Joint Course 第10回講義 2020年12月11日

20201211日(金)、第10回「UTokyo-PKU Joint Course」が開講された。今回の講師は章永楽氏(北京大学法学院副教授)が務めた。講義の内容は近代中国のジャーナリスト梁啓超(1873−1929)が第一次世界大戦後、ヨーロッパ視察へ赴いた際の旅行記『欧遊心影録』である。

梁啓超(1873年-1929年)。画像は以下より転載(パブリック・ドメイン)https://ja.wikipedia.org/wiki/梁啓超

章永楽氏は事前配布の教材で、主に政治的側面から『欧遊心影録』を紹介した。大戦後のパリ講和会議などで決められた新しい政治的局面を目にした梁啓超の記録とそこから生まれた思想的変化を、国家間関係と変化、新しい国家構想、立憲制度の作成との3つのテーマから説明した。最後に章氏は梁啓超のテキストから離れ、現在の国際関係に関する2つの問題を提起した。それは、国民国家以上の政治的実体(political entity)を作るトレンドは今の世界に存在するのか、そしてCOVID-19の世界的大流行がどのように冷戦後の国際秩序へ影響を及ぼしたのか、との問題である。

討論パートでは、まず梁啓超の国家概念の変遷から、西洋の概念のローカライゼーション(土着化)、そして「世界主義国家」という梁啓超の概念を、英語をはじめとする多言語にどのように翻訳すべきかをめぐって議論が展開した。現在の我々が直面する状況は1920年代の人々と同じ、つまり人と人、国と国とのコネクションをどう再建するかにあるとの指摘がなされるとともに、そこから国民国家を越える政治的主体という構想自体が楽観的すぎるのではないかとの質問が出た。ついで国際関係の中の暴力性、今後の国際関係への展望、世界中の主導的役割が存在する意義へと様々な議論が交わされた。

梁啓超が考えた「世界主義的国家」とそれに基づく国際関係においても暴力性が含まれる可能性は否定できないと章氏は学生の質問を認めながら、当時の国際情勢に戻って彼の真意を考察する必要性を説いた。梁啓超が探求していたのは、西欧主導の国際秩序における暴力性に対しての抵抗の可能性であった。これこそが梁啓超の思想がもつ批判力ともいえる。現在の国際関係をみてみると、COVID-19は既存の国際組織がもつ欠陥を露呈させはしたが、国際社会が連携を行うこと自体は否定すべきものではない。これをうけて章氏は理想的国際秩序へ求められる要素として、平等、多元そして結束力の3つの要素を提示した。バイデン氏の当選が確実となり、アメリカのグローバル政策の再転換を迎える未来の世界において、世界の分断を防ぐための日本と中国の役割を期待すると述べて講義は締めくくられた。

報告者:胡藤(EAAリサーチ・アシスタント)