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2024.04.05

鵬程万里:RA任期を終えて 13 横山雄大さん

コロナ禍のために在外調査を行えず、博士課程に進学後も手持ち無沙汰にしていた20216月以来、210か月にもわたったEAAでのRAが今まさに終わろうとしている。

最初にEAAに関わるきっかけとなったのが、一高プロジェクト内の「藤木文書アーカイヴ」プロジェクトであった。その詳細についてここで触れるのは避けるが、「脱コロナ」期という移行期において、「もうひとつの一高――戦時下の一高留学生課長・藤木邦彦と留学生たち」と題した博物館展示を開催できたのは幸いであった。ここで筆者に期待されていた役割は、日中関係史の考証のようなものではなかったかと思われる。

主に「東アジア教養学」でのTAを中心に、より本格的にEAAでの業務に筆者がかかわり始めたのは、2022年度からであった。とりわけ20239月には、「對『天下』的批判性探討:當代中國思想•哲學與歷史學•國際關係論之間的對話」と題したシンポジウムを開催し、そこでの企画運営・司会を務めた。現代中国思想・哲学で行われている「天下」の再解釈に対して、国際関係論や歴史学の立場からの視点からはどのような評価が与えられるだろうかという問題意識のもとに、このシンポジウムを開いたのである。

しかし、とくに「藤木文書アーカイヴ」プロジェクトについて、筆者は(間接的ながら)EAAの活動に今後も関与し続けるつもりである。その意味で、必ずしも「離任」という実感が湧かないというのが、正直なところである。

 より抽象的な点に話を進めたい。EAAにおいて筆者に期待されていた役割は、(政治外交史が社会科学であるか人文科学であるかには議論があるだろうが)社会科学寄りの知見を提供することではなかったかと思う。実際にこの任を果たすことができたのかは筆者には自信がないが、少なくともそのように意識してきたつもりである。上述した「天下」に関するシンポジウムも、そのような考えから企画したものだった。翻って、EAAでの業務を通じて、筆者自身も思想・哲学という研究分野から示唆を受けたように思える。例えば、文化大革命期に中国外交は左傾化したが、そのときの「左」のイデオロギーとは具体的に何なのか、あるいは、対中・対ソ外交を指揮した日本の政治指導者が、学生時代以来共産主義に対してどのような考えを抱いていたのかといった点に、筆者も注意を払うようになった。

 このように筆者にとって、EAAでのRAの経験は今後の研究に役立つものであった。また翻って、筆者の存在がEAAに対して一定の貢献となっていれば幸いである。いずれにせよ、引き続きご指導のほどよろしくお願いいたします。