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2022.12.21

【報告】第18回東アジア仏典講読会

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2022年12月17日(土)日本時間14時より、第18回東アジア仏典講読会をオンラインにて開催した。今回は土屋太祐氏(新潟大学准教授)と小川隆氏(駒澤大学教授)による『宗門十規論』と『宗門武庫』の講読がなされた。

 

 

『宗門十規論』は第四章の前半を会読した。そこでは禅僧の行なうべき徳目として、邪正を弁えたうえで時宜に応じて教えを説くべきことが挙げられ、その具体例として著者の法眼の周囲にいた四種の勢力(曹洞・臨済・雲門・潙仰)が言及されている。これに法眼自身を加えたものが、後に禅宗全体の枠組みとして定着する所謂「五家」であるが、本書の当該箇所の記述は難解であり、従来の研究でも十分に解明されていなかった。それに対し今回、関連の記述や用例の分析をめぐり議論がなされ、それらが主に師弟の関わり方を軸に各派の特徴を示したものであることが明らかになった。

 

 

『宗門武庫』は第7段、言法華と呂夷簡の話を会読した。言法華は神異で知られていた北宋の禅僧であり、呂夷簡は時の宰相である。その異能を試そうとした呂が、彼を招く書状を焼いて密かに念じたところ、言法華はそれを感知して呂の邸宅を訪れた。呂が自身の未来の吉凶を尋ねると、言法華はそれを的確に予見した墨書を与えたという。以上の内容について詳細に会読いただいた後、当該の一段に見える語句の用例や、中国禅宗における神異の評価などをめぐり、様々な議論が為された。

今回は年内最後の講読会であり、終了後に簡単な懇談の場が設けられた。新型コロナの第8波が広まりつつあるなかオンライン開催を余儀なくされたことは残念であったが、毎回ご参加いただいている若手研究者の近況報告を伺い、たいへん頼もしく思った次第である。

 

報告者:柳 幹康(東洋文化研究所)