ブログ
2020.12.23

【活動報告】UTokyo-PKU Joint Course 第11回講義 2020年12月18日

2020年12月18日(金)、第11回「UTokyo-PKU Joint Course」が開講され、第10回に引き続き章永楽氏(北京大学法学院副教授)が講師を務めた。今回も旅行記『欧遊心影録』を取り扱い、梁啓超のヨーロッパの学問、社会主義運動と東西洋文明に関する観察について講義、議論した。

第一次世界大戦の影響として、「科学万能主義」の破綻や、社会主義運動の勃興と東洋文明の再発見などの思潮が生まれた。梁啓超は西洋が直面していた窮境をふまえて、未来の東西洋文明の総合的発展に対する展望を述べた。章永楽氏は事前配布の教材で「社会主義は20世紀最大の社会運動という梁啓超の予言は実現したと言えるのか」、そして「現在の世界において科学の位置とは何か」との問いを提示した。

学生諸氏と議論する章永楽氏

章氏の示した問いを受けて、討論パートでは国家と階級との関係、「科学精神」と科学自体との違いなど幅広く議論が展開され、中国のギグエコノミー(Gig Economy)や、Covid-19対策における「科学」の位置などについても議論された。ただ同時に、梁啓超のみた政治・経済情勢とその論点が現在のわれわれにとってどういうヒントを与えているのか、という問題は1時間の授業のあいだ参加者の間で常に共有されていた問題であった。議論の終盤、インターナショナリズムとトランスナショナリズムとの違いから、未来の国際社会にとって必要な「普遍的な想像」(universal ideal)の可能性が言及され、ここで梁啓超や中国の知恵が必要だと章永楽氏は述べ、議論を締めくくった。

二回にわたる梁啓超をめぐる討論は、参加者たちが現在の世界情勢を念頭において、歴史と現実とが行き交うなか、人間社会や世界のあり方について思考するものであった。100年前のテキストを読んでともに現在と未来を考えることができたという意味で、多数の人が一緒にテキストを「会読」する価値をよく表した授業であった。

報告者:胡藤(EAAリサーチ・アシスタント)