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2023.01.12

【報告】THE ISLAND「WU5」展示

2022年11月25日(金)、11月26日(土)の2日間、駒場キャンパス101号館11号室ならびに同館1階廊下にてTHE ISLANDの作品「WU5: the hanging of the crown」の展示が行われた。これは香港を拠点に活動するアーティスト、ダニエレ・ジェミニアーニが監督した映像を中心とするインスタレーション作品である。コロナ禍での中断を挟んで撮影、編集、制作された本作は、かつて占領時に日本軍の特攻隊が潜んでいた、香港西南に位置する離島、ラマ島の神風洞窟が映っていたように、日独伊三国同盟が結ばれていた時代を強く彷彿させるものだった。

  2015年以来、ジェミニアーニはみずからのスタジオ名であるTHE ISLAND名義で、タイ、台湾、日本、中国における社会的、政治的文脈についてのリサーチにもとづき制作活動を展開している。THE ISANDのアートプロジェクトのうち2018年から WU FILM PRODUCTIONの名のもとで始動した企画の成果のひとつである。

三島由紀夫のデスマスク能面、京都学派のテクスト、ナチス・ドイツといった歴史的な形象、吃音、マゾヒズム、痙攣、夢といった個人の経験と形而上学的思想、モノクロの映像、英語・中国語・フランス語・日本語の音声、韓国語の書き込みの入ったニーチェ『ツァラトゥストラ』イタリア語訳、ハイデガーのゴッホ論を想起させるブーツといったオブジェがメディア横断型で混成され呈示された。映像5点のうち2点はそれぞれプロジェクターで室内のスクリーンにループ投影された。ほかの3点はiPadでみるかたちで配置された。ぜんたいの鑑賞時間はおよそ60分として構成された。

静かな催しであったが、遠路からも観客が訪れ、熱心に作品について言葉が交わされた。今後より大きな会場でオルガン音楽、身体芸術ともコラボレーションする新たな展示が企図されているようなので、楽しみに待ちたいと思う。

報告:髙山花子(EAA特任助教)
写真提供:ダニエレ・ジェミニアーニ