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第9回「痛みの研究会」

2017年にスタートした本研究会は、文学・歴史学・宗教学などの人文知によって、「痛み」という問題に取り組んできました。
9会のミーティングでは、痛みの表現・表象がテーマとなります。前半では本研究会のコアメンバーである南谷奉良氏が主観的な情動体験であるところの痛みを表現する困難、その伝達不可能性を記述した文学作品や研究文献を紹介します。
後半では、フランク・ノリス『マクティーグ―サンフランシスコの物語』(幻戯書房, 2019年)を翻訳した九州大学人文科学研究院の高野泰志氏が講演を行い、同書の作中人物の「痛み」の表現を、文学作品を書くことのメタフィクショナルな表象として読むことで、新たな観点から『マクティーグ』を文学史の中に位置づける試みとなる予定です。

【高野泰志氏講演概要】
1899年に出版されたフランク・ノリスの『マクティーグ』は、アメリカ自然主義文学の代表的作品であり、主人公マクティーグの転落を描いた物語として知られている。その一方で物語はマクティーグの妻となる女性トリナの痛みを中心に描いた作品でもあるが、そのことはこの作品がモダニズムの作家たちが登場する直前に書かれたことと関連づけると興味深い。なぜならモダニズムは言語の表象可能性に疑いをさしはさむことによって始まった文学運動であり、「痛み」とはまさしく「痛み」を感じる主体にとって正確な言語表象を困難にする経験だからである。本発表は作中人物の「痛み」の表現を、文学作品を書くことのメタフィクショナルな表象として読むことで、新たな観点から『マクティーグ』を文学史の中に位置づける試みである。

【日時】
2021年3月21日(日)14:00-17:40

【参加方法】
参加ご希望の方はこちらからご登録ください
※定員50名(先着順)

【使用言語】
日本語

【登壇者(発表順)】
南谷奉良氏(日本工業大学共通教育学群講師)
高野泰志氏(九州大学人文科学研究院准教授)

【プログラム】
14:00-14:15 開会の挨拶
【第1部】研究発表
14:15-15:15 「未踏の雪原のフィールド—痛みを表現する障壁と困難について」
南谷奉良氏(日本工業大学共通教育学群講師)
15:15-15:30 休憩
【第2部】講演
15:30-17:30 「痛みの表象可能性—『マクティーグ』を中心に」
高野泰志氏(九州大学人文科学研究院准教授)
コメント(南谷奉良氏)・質疑応答
17:30-17:40  閉会の挨拶

【共催】
・科研費(若手研究)
「ジェイムズ・ジョイスと〈苦痛の鞭を打つ者〉―文学における痛みの文化史的考察」(2020年度-2022年度)
・東京大学東アジア藝文書院(EAA

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